台湾資料

展示パネル  -資料展示室- 
 
浅井恵倫は、日本でよりもむしろ海外の言語学史の上での方が有名である、といってよいかもしれません。というのも、トゥルベッコイの『音韻論の原理』に、浅井の研究が利用されているからです。二〇世紀の人文科学において非常に大きな知的影響力を持った構造主義は、トゥルベッコイやヤコブソン等に代表される音韻論の研究を基盤にして生まれました。浅井の『ヤミ語の研究』(1936年 "A study of the Yami language, an Indonesian language spoken on Botel Tobago island")は、国立ライデン大学に博士論文として提出された著作ですが、これがトゥルベッコイの目にとまって『音韻論の原理』に引用され、音韻論の原理を解き明かすための資料として貢献したことは特筆すべきことです。同書に引用された日本人の著作は、わずかに浅井ともうひとり、神保格のみでした。後に浅井はこう書いています。「我々の下積的作業の成果により、他日外人の言語学者が花々しい比較研究に利用されるとしても、世界の humanities に寄与すれば、我々は満足すべきではなかろうか」『民族学研究』18(1-2):16こうした言葉以上に、浅井の言語学や人文科学への寄与は、もっと評価されて然るべきではないでしょうか。
浅井と構造言語学


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