台湾資料
  関連イベント

■上映会
「サヨンの鐘」

・3月10日(木)午後5時半より
・アジア・アフリカ言語文化研究所 大会議室
・解説:笠原政治(横浜大学国立大学教授)

 本上映会は、「台湾資料」展の画像資料 が撮影された中心的な年代と思われる 1930年代中葉以降の台湾の原住民社会 の様子を知る手がかりの一つとして、開催されました。
 「サヨンの鐘」の封切は、1943年ですが、そのもととなったタイヤルの少女サヨンの落命事件がおこったのは、1938年のことでした。映画化にあたっては、時代設定が 1942年頃に変更され、台湾総督府、満州 映画協会、松竹株式会社が、有名な女優李香蘭を主役に起用して共同で制作した ことなどから、国策映画であったことがわか ります。
 上映会当日には、笠原政治横浜国立大学 教授をお招きし、戦前の台湾原住民社会 の状況や、「サヨンの鐘」の映画や音楽が 戦後の台湾社会に残している影響などを 解説していただきました。長い間、台湾原住民社会の研究に従事された先生なら ではのお話をうかがうことができました。
 参加者は50名ほどでしたが、幼少時に 台湾で過ごされた経験をお持ちの方が、 当時の思い出を織り交ぜながら、笠原先生と質疑応答をされたりするなど、和やかな 雰囲気の中で上映会は終了しました。
(三尾裕子)


当日のナビゲーター、笠原政治横浜国立大学教授


■国際ワークショップ
「戦後台湾における「日本」:植民地経験の連続・変貌・利用」

・3月5日(土)~6日(日)
アジア・アフリカ言語文化研究所 大会議室

  本ワークショップは、植民地期及びその
後の台湾社会において「日本」がいかなる意味・価値を有してきたのか、また人々が 「日本」的なものをいかに連続させたり、時には変貌させたり、利用したりしてきたのかを、具体的な事例を検証することから再検討してみることを目的として開かれました。
台湾から2名のスピーカを招聘し、国内からは事前登録制の一般参加者を含め50名ほどが参加しました。
 本ワークショップは、昨年度に開催された
日本台湾学会での分科会(2003年3月14日、 於関西大学)および、AA研で開催した国際ワークショップ(2004年3月27,28日)に続く 一連の企画の第3弾にあたります。
 今回の会議では、日本と台湾の人類学・物質文化研究及び歴史学の専門家が学術的な交流を行うだけではなく、日本植民地を経験した他地域-朝鮮半島、太平洋-を専門とする研究者にもコメンテータとして参加していただくことによって、異なった立場からの視点を提示しあい、議論を行っていくことができました。本会議が今後の上述の諸地域の専門家との比較研究、共同研究を行うための基礎作りとなったことは、大きな収穫でした。
(三尾裕子)


ワークショップでは、9名による発表に基づき、
活発な討論が交わされました

■講演会
「台湾原住民研究の軌跡-日本統治時代から今日まで」

・3月25日(木)午後1時より
・アジア・アフリカ言語文化研究所 大会議室
・講演者:李壬癸・☆相揚・土田滋(☆は「登」におおざとへん)

 この講演会では、AA研台湾資料のコレクションを作り上げた故小川尚義・ 浅井恵倫両先学の事跡と業績、その現代の台湾原住民研究との連関の紹介が行われました。
 AA研の三尾・豊島による台湾資料の簡単な概観ののち、台中市埔里で原住民研究活動を推進している鄧相揚氏が、豊富な画像を用いて原住民各部族の文化運動を紹介し、日月潭付近での浅井の資料蒐集を振り返って、原住民文化研究への貢献を高く評価されました。
 ついで、生前の浅井恵倫と親交のあった土田滋教授が、浅井恵倫の人物、事跡を語られ、併せて浅井写真資料中の不明の資料・人物などの情報提供を呼び掛けられました。
  最後に、小川尚義資料を詳細に研究された李壬癸教授が、オーストロネシア言語学のパイオニアとしての小川の業績を紹介され、多くの未公刊研究資料の存在を強調されました。
  この講演会によって、両故人の研究活動とその残した資料の価値の賞揚が行われ、大会議室を埋めた聴衆に深い感銘を与えました。
(豊島正之)


講演のようす


■国際シンポジウム
「台湾原住民研究:日本と台湾における回顧と展望」

・3月26日(土)~27日(日)
・アジア・アフリカ言語文化研究所 大会議室

 この国際シンポジウムは、1980年代後半以来、台湾の民主化や世界的先住民運動の趨勢にともなって激変してきた台湾原住民社会・文化の研究について、これまでの研究史を回顧し、今後の課題を展望することを目的として開かれました。
 国外からの招聘者10名、国内からの招聘者18名のほか、一般参加者も国内外から約50名ありました。
プログラムでは、台湾の国立政治大学林修 教授による記念講演、アメリカ在住で元早稲田大学講師の金子えりか博士による特別講演の他、日台の若手研究者9名が研究報告を行いました。
 各報告には、アメリカのデューク大学レオ・チン博士を含むコメンテーターがコメントを加え、さらに総合討論をおこないました。報告者には4人の原住民籍の大学院生が含まれ、当事者として自らの問題を提出し討論する貴重な場となりました。
 日本の植民地主義や現在の原住民政策などの話題を中心に、日台の研究者、さらにアメリカの研究者をも交えて率直な意見交換と討議が行われたことは、非常に有意義なことでした。このような学術交流が今後も継続されるよう努力することを、一同確認しました。
(宮岡真央子)


金子先生による特別講演では、1970年代の 台湾調査の写真を拝見する一幕もありました。