文字・データベース

ここに掲げられたのは、文字自体の用法を探るデータベースであり、書字コーパス構築の前提となるものである。特に、碑文・石刻類のデータベースは、いずれも原石・原本を直接鮮明に再撮影したものに基づいており、現在得られる最も鮮明・正確な資料である。これらのデータベースは、いずれも、それぞれの分野の専門研究者が、現在の最先端の学問的知見を盛り込んで翻刻・注釈を施した結果の「解釈本文」に基づいて構築したものであり、単に撮影済の画像を陳列するものではない。

つまり、これらのデータベースは、文献学的に厳密な攻究の結果を、様々な切り口で自由に表現するための手段なのである。

漢字規範字体データベース 唐代から現代までの漢字の規範字体を総覧
漢字規範字体データベース
6世紀~18世紀の漢字写本・石刻本・版本から、特に当代・後代の字体の規範と位置付けられた文献を厳選し、文字単位で総覧したもの。中国写本(敦煌本・宮廷写経類)、中国刻本(石経)・版本(宋版)、中国以外の写本・版本を時代順に対照。朝鮮・越南版本、日本近世版本・写本にも拡張中。「漢字字体規範データベース」を構築・維持している漢字字体規範データベース編纂委員会より、「東洋文字文化の継承と発展に寄与する優れた業績」であるとして、2006 年6月、第一回「立命館白川静記念東洋文字文化賞」を受賞。
中期朝鮮語形態素・字音データベース 中世朝鮮語の字音資料
中期朝鮮語形態素・字音データベース
15~18世紀(一部その後代の覆刻を含む)の朝鮮での韻書・陀羅尼音注などを、字音・音節単位に分析し、同声・同紐(同じ頭子音・同じ韻尾)の音節を系聯(類推検索)して、字音体系・字音形態素の用法を構成的に示すデータベース。一部は原本画像も閲覧可能。
Illustrative Database of Historical Development of Glyphs of Telugu-Kannada Script 南インドの文字の歴史をたどる
Illustrative Database of Historical Development of Glyphs of Telugu-Kannada Script
南インドのテルグ文字、カンナダ文字がブラーフミー文字から現代に至るまでにたどった足跡を追う。特にKoravi Inscriptionの調査の記録。
チャムの碑文 ベトナムに伝わった古いインド系文字、チャム文字の字形変化を調べる
チャムの碑文
東南アジア地域特に大陸部に伝わったインド系文字最古の資料(ベトナムのカイン=ホワ省ヴォー=カインから発見された推定4世紀のサンスクリット石刻文)以降の、チャム文字の体系および字形変化の研究成果。チャム文字刻文資料の高精細デジタル画像により、チャム文字の通時的変化の概観が可能。碑文画像とともに転写テキスト、訳、注釈が表示される。
ビルマ文字の碑文・墨文 ビルマ文字の歴史をたどる
ビルマ文字の碑文・墨文
東南アジア大陸部へ伝播し発展したインド系文字の一つビルマ文字の、最古の資料である12世紀のラージャクマール碑文から20世紀の墨文に至る、通時的変化を概観できる。ビルマ人による最古の王朝が興隆したバガン、その滅亡後乱立するシャン人国家の1つが拠ったザガイン、西南部ラカイン地方のビルマ系王朝の都ミャウッウー、そしてコンバウン王朝最後の都が置かれたマンダレーの4ヶ所で行なった文字資料の調査と高精細デジタル撮影の成果。
ベトナム ホイアン歴史民族誌 東西交易の拠点、ホイアンの歴史を語る、チュノムを含む漢文資料
ベトナム ホイアン歴史民族誌
15世紀から19世紀にかけて海の東西交易の拠点であったベトナム中部のホイアン及びその近郊に残されている漢文史料(チュノムを含む)の調査研究の成果。ホイアンの歴史および社会・文化の特質を研究するための一次資料。特に、ベトナム化していった中国系移民による碑文の高精細デジタル画像を網羅的に公開。
Sinai Rock Inscription シナイ半島南部に残るアラビア文字とサムード文字の岩壁碑文
Sinai Rock Inscription
シナイ半島南部に残る多くの岩壁碑文のうち、今まで殆ど注目されて来なかったアラビア文字とサムード文字についての調査・記録の研究成果。中近東の文字史研究、人名研究、交易・交通史研究に寄与。財団法人中近東文化センター・イスラーム・エジプト調査隊との共同研究を実施。エジプト考古庁よりの調査許可や、爆弾テロによる当局からの調査制限など困難があった。すべての碑文サイトはGPSによって緯経度が記録されており、GIS(地理情報システム)ツールにより属性データ(人名や彫り手の同定、使用文字など)と関連付けて地図上にプロットして公開する予定。
小川尚義・浅井恵倫 台湾資料 台湾先住民についての言語・民族資料
小川尚義・浅井恵倫 台湾資料
本研究所所蔵の小川尚義・浅井恵倫旧蔵資料のデータベース。約100~60年前の台湾先住民(原住民)についての言語・民族資料(フィールド・ノート、語彙カード、草稿、写真、土地契約文書)が検索でき、全て原本画像が閲覧可能。
小川尚義・浅井恵倫 台湾資料 石鼓文からデジタルフォントまで:府川充男「聚珍録」詳細検索
府川充男「聚珍録」総合検索
府川充男「聚珍録」(2005、三巻、三省堂)は、漢字・仮名の字形・書体・字体・組版を論じた最も包括的且つ詳細な書物である。十年前の出版予告以来の印刷史研究者の渇は、2005年の GICAS 提携出版(科学研究費助成出版)によって漸く癒された。本書三巻三千頁に及ぶ長大な記述と三千点を越える図版の数々を縦横に検索可能とするデータベース。
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