いま、私たちアジア・アフリカ言語文化研究所は、
文字に関するさまざまな研究に意欲的にとりくんでいます。
次世代のネットワーク社会にむけた文字のデジタル化はもちろんのこと、
過去から私たちがゆずりうけた大切な財産である文字そのものに注目し、
いまだ知られざるその歴史やルーツの解明など、
「文字はどこから来て、 どこに行こうとしているのか」という
文字の過去と未来に同時に目をむけたスケールの大きな研究に力をそそいでいます。
そうした私たちの研究の成果を広く知っていただくための試みとして、
文字の展覧会「アラビア文字の旅」を企画しました。
今回の展覧会は、2002年に開催し、好評を頂いた
「アジア文字曼陀羅〜インド系文字の旅」につづく、
「文字の旅シリーズ」の第二弾です。
文字の宝庫といわれるアジアは、漢字、インド系文字、アラビア文字など、
それぞれにユニークな特徴をもった文字たちがたがいに、
おしあいへしあい、交じりあい、ときにまた、ぶつかりあい、せめぎあい、わかれあい
しながら共生している文字の共同体です。

人が旅をするように、文字も旅をします。
本展は、アラビア文字とその旅の世界にみなさんをお招きしたいと考えています。
アラビア語を書きうつすアラビア文字はもともと線の組み合わせでできていましたが、
イスラームが誕生した七世紀、
神のことばを正しく書き記すための点(母音記号)がうたれました。
それ以後、アラビア文字は神のことばを伝えるため、アラビア半島を旅立ち、
砂漠を越え、山を越え、海を渡り、何世紀にもわたる長い旅をはじめました。
やがてアラビア文字はイスラームを受けいれた人びとの間でひろまり、
さまざまな異なる言語と出会いました。
そのとき人びとは、自分たちのことばを書き記すために、
新たにさまざまな点(子音字)を打つ工夫をほどこしました。
この展覧会では、「規範と拡張」「神聖と世俗」「伝統と現在」を軸にしながら、
「神が線をひいて、人が点をうった」アラビア文字の旅にみなさんをご案内いたします。

私たちは、この展覧会を通じ、アジア・アフリカ言語文化研究所の研究成果を
広く一般に公開したいと願っています。

では、どうぞごゆっくりご観覧ください。


東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所所長
宮崎 恒二

アラビア文字の旅実行委員長
町田 和彦


展覧会「アラビア文字の旅〜線と点」

◎主催:東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所
◎制作実行委員:町田和彦 (実行委員長) 小田昌教 菅原純
◎アートディレクション:小田マサノリ
◎事務局スタッフ:前田珠緒 三森麻衣子 君島唯
◎会場ガイド:毛利恭子 林由子
◎WEB制作:鎌田幹子

○解説執筆:町田和彦 菅原純 小田昌教 長渡陽一 西尾寛治 森島聡 佐藤健太郎 萩田博
  深見和子 黒岩高

○資料提供:本田孝一 町田和彦 菅原純 小田昌教 黒木英充 飯塚正人 河原弥生 森島聡
 羽田亨一 榮谷温子 新免康 森本一夫 長渡陽一 萩田博 黒岩高 清水由里子 小沼孝博
 サフラー・ターヘリー・ハギーギー 吉澤誠一郎 安藤潤一郎 佐藤実

○制作協力:上岡弘二 宮崎恒二 澤田秀夫 新井和弘 児玉茂昭 笠井洋子 阿部優子
 植村健太 
千葉淑子 坂本啓子 高木揚子 ピルザン HIGURE17-15CAS
 JUSTYプロモーション 三鈴印刷 日本通運 エクセリードテクノロジー
 情報資源利用研究センターほか